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海辺の家(津波に対しての防御をどのように考えるか?)

 東日本大震災から四ヶ月が経った。津波の脅威、自然の力の大きさを改めて知った日である。
しかし、この震災も少しずつ人々の意識から薄れていくだろう。
ただし、駿河湾の沿岸部・沼津に住む私にとっては、建築とまちづくりの考えに大きな課題を投げ掛けてくれた。
特に木造住宅は、今回の津波の被害では、津波と共に、街を壊していく凶器になってしまった。
木造建築は沿岸部の建築としてはふさわしくないのか?何度も何度も考えたが、木造建築は海からの塩害には強い建築である。また湿気等にも調湿機能がある優れた建築で、人の生活する住宅としてはよりよい工法だと思う。
この四ヶ月の間、沼津・千本港町の家では、今だからこそ、逆に「本来、住宅はどうあるべきか」を私なりに考え抜いた。
できるだけ小さな家で豊かに暮らすこと。それは金額的にコストを抑えるという面もあるが、但し基本性能は損なわない地震の揺れに対してはしっかりと対応できる家。
大地震が起こり、大津波が来ると予測された時は「逃げることができる」
けれども、中規模な津波で被災した場合、修復可能な家にする。これは北茨城市の沿岸部の現地調査して考えたことである。
また、この家は、地震や津波以外にも、厳しい建築条件がある。周囲を建物で囲われ、その場所には陽の光が入りにくい。周囲の家はみな盛土してあり、地盤が高い。
設計者としてこの2ヶ月、考えに考え抜き、先週、自分自身が「これだ」と思えるプランが出来上がった。
施主も希望が詰まったプランになったようだ。
海辺の家(津波に対しての防御をどのように考えるか?)_d0067498_22305632.jpg

自分で自分のことを褒めるのも手前味噌であるが、やはり建築は小さな住宅でも、設計者にしっかりと設計を依頼して家をつくるべきだと思う。
設計している時は、自分自身が納得いくまで設計するには、かなりというか、相当に苦しい。
でも、これだと思える設計に出会った時は、本当の意味でうれしい。20年以上、住宅設計一筋であっても、「その場所、その家族にあった家」を見出すことは簡単なことではない。

今回の地震の建築被災で、内地でも大きな問題となっている液状化の検討もした。
海辺の家(津波に対しての防御をどのように考えるか?)_d0067498_22512775.jpg

ボーリング調査をお願いした地質調査のデータでは、震度6~7クラスの350galでの検討(静岡県構造指針の液状化検討終局限界検討用)では一応安全となった。今回の地震波の500galでの検討も念のためにしたいと思う。
被災地に行き思うのは、中規模な被災地域での建築の被災した大きな原因は、設計時、施工時の基本的な設計の検討をしないためである。
私達は、この震災の建築の教訓を生かして、多少の手間はかかっても、しっかりと設計したい。

HPにも、この家の設計の進捗状況を記していきたい。それが私自身にできる震災復興であると思う。
by atelieryou | 2011-07-11 23:23 | 住まい

静岡・沼津で木造住宅を中心に設計監理しています。

by atelieryou
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